直接工の消費賃金算定の基礎

製品の製造に直接かかわる工員を直接工といいます。直接工が作業に従事することによって、工場は直接工の労働力を消費することになりますので、直接工の労働力の消費額を算定することが必要となります(これを消費賃金の算定といいます)。直接工の消費賃金の算定は、以下のように実際の作業時間又は作業量に賃率を乗じて算定することになります(原価計算基準十二(一)参照)。

直接工の消費賃金=消費賃率×作業時間

消費賃率とは、1時間当たりの賃金をいいます。消費賃率の算定は直接工に対する賃金の支給額を就業時間で除すことによって算定します(消費賃率は作業員ごとの個別の消費賃率のほか職場や作業区分単位の平均賃率によることができます)。

消費賃率=直接工に対する賃金の支給額/直接工の就業時間

作業時間とは直接工の実際の作業時間をいいます。直接工の作業時間は作業内容などにより以下のように分類することができます。このうち、賃金の支払い対象となる時間の合計を就業時間といい、直接工に対する賃金の支給額を就業時間で除すことにより実際の消費賃率を算定します。

直接作業時間 製品の製造に直接かかわった時間です。製造ラインで働いた時間などをいいます。
間接作業時間 製品の製造に直接かかわらない作業時間です。機械のメンテナンスや工場の掃除を行った時間などがこれに該当します。
手待時間 工員の責任以外での待ち時間をいいます。材料待ちや機械の故障による待ち時間などがこれに該当します。
就業時間 賃金の支払い対象となる時間をいい、上記の直接作業時間、間接作業時間、手待時間などの合計時間をいいます。
休暇時間 昼休みなどの休暇時間をいいます。賃金の支払い対象とならない時間です。

直接工は上記のように、製造ラインに立って製品の製造に直接かかわっている時間(直接作業時間)のほか、工場の機械のメンテナンスや掃除をおこなっている時間(間接作業時間)もあります。直接工の消費賃金はそれぞれの作業時間ごとに賃率を乗じ、これを細分することが必要となります。

直接賃金=消費賃率×直接作業時間
間接作業賃金=消費賃率×間接作業時間
手待賃金=消費賃率×手待時間

上記のうち、直接労務費となるのは消費賃率に直接作業時間を乗じた直接賃金のみです。

(具体例-直接工の消費賃金の算定)

当月の直接工の賃金支給額(消費賃金の合計)は100,000円、直接作業時間は70時間、間接作業時間は25時間、手待時間は5時間であった。当月の直接工の消費賃金を直接賃金・間接作業賃金・手待賃金ごとに算定しなさい。

手順1.消費賃率の算定

消費賃率は直接工に対する賃金の要支給額を就業時間で除して算定します。就業時間は賃金支払いの対象となる時間であり、直接作業時間・間接作業時間・手待時間の合計となりますので、消費賃率は以下のように算定します。

就業時間:直接作業70時間+間接作業25時間+手待5時間=100時間
消費賃率:賃金支給額100,000円/就業100時間=1,000円

手順2.消費賃金の算定

消費賃金は消費賃率に作業時間を乗じて算定しますので、各消費賃金の算定は以下のようになります。

直接賃金:消費賃率@1,000円×直接作業70時間=70,000円
間接作業賃金:消費賃率@1,000円×間接作業25時間=25,000円
手待賃金:消費賃率@1,000円×手待5時間=5,000円

なお上記のうち、直接賃金の70,000円が直接労務費、間接作業賃金と手待賃金の合計の30,000円が間接労務費となります(詳細は労務費(ろうむひ)の分類をご参照ください)。

(関連項目)
賃金・労務費勘定の記帳の基礎

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