標準原価計算における原価差異とは、一定期間において集計された製品の標準原価とその期間に実際に発生した原価の発生額(実際原価)との間に生ずる差額(標準差異)をいいます。
原価差異が生ずる場合には、その大きさを算定記録し、これを分析することが重要となります。これは、原価差異を財務会計上適正に処理して製品原価およびその期間の損益を確定させるとともに、その分析結果を各階層の経営管理者に提供することによって、原価の管理に利用するためです(原価計算基準第44項参照)。
有利差異と不利差異
原価差異は上記のように、一定期間における標準原価と実際原価との差額といえますが、標準原価と実際原価といずれが大きかったかにより有利差異と不利差異とに区分することができます。
1.有利差異(貸方差異)とは
標準原価と実際原価とを比較し、標準原価の方が多く、実際原価の方が少なかった場合の差額を有利差異(または貸方差異)といいます。
標準原価 > 実際原価 |
当初の予定(標準原価)よりも実際の原価の発生額が少なくすんだので、企業にとって良かった(有利だった)ため有利差異と覚えていただいても構いません。
有利差異は標準原価(予定原価)よりも実際原価の発生額が少ない場合の原価差額を意味します。有利差異は会計上は利益(収益)に加算されます。収益は帳簿上は貸方に記帳しますので貸方差異ともいいます。
2.不利差異(借方差異)とは
標準原価と実際原価とを比較し、実際原価の方が多く、標準原価の方が少なかった場合の差額を不利差異(または借方差異)といいます。
標準原価 < 実際原価 |
当初の予定(標準原価)よりも実際の原価の発生額が多くなってしまったので、企業にとって良くなかった(不利だった)ため不利差異と覚えていただいても構いません。
不利差異は標準原価(予定原価)よりも実際原価の発生額が大きい場合の原価差額を意味します。不利差異が発生した場合、会計上は費用に追加で加算されます。費用は帳簿上は借方に記帳しますので借方差異ともいいます。