製造間接費の配賦と原価計算表(個別原価計算)の基礎

個別原価計算においては、まず原価要素を製造直接費と製造間接費とに区分することからはじめます。

このうち製造間接費とは、どの製品にいくらかかったかを直接的に把握することができない原価(または困難な原価)をいいます。例えば、複数の種類の製品を製作する工場において、工場全体で発生した電気料金やガス・水道料金などは、どの種類の製品を製造するためにどれだけの金額が発生したかを把握することができない(または困難)なものであるため、製造間接費となります。
これらの間接費はどの製品のためにいくら発生したものかを直接的に把握することができないため、作業時間など一定の配賦基準をさだめ、この配賦基準をもとにその発生額全額を各製品(個別原価計算では製造指図書)に配賦することになります。

1.配賦基準の設定

製造間接費の配賦計算については、まず製造間接費の発生の実態を反映するような配賦基準を定めます。たとえば工場の電気代などは、機械の作業時間に比例して発生するのであれば、機械作業時間を配賦基準とすることになります。

2.配賦率の算定

配賦基準の決定後、実際の配賦計算で使用する配賦率を算定します。配賦率は製造間接費の発生額を配賦基準の合計値で割ることにより算定します。

配賦率=製造間接費発生額÷機械作業時間の合計

3.実際の配賦額の算定

製造間接費を各製品(各指図書)ごとへ配賦するための配賦率の算定後、各製品(各指図書)ごとの製造間接費の実際の配賦額を算定します。
製造間接費の各製品への配賦額は、上記で求めた配賦率に、各製品(各指図書)ごとの配賦基準の発生値(機械作業時間を配賦基準としていいる場合であれば、各製品ごとの機械作業時間)を乗じて算定することとなります。

各製品への製造間接費配賦額=配賦率×製品ごとの機械作業時間

(具体例-製造間接費の配賦)

たんす(指図書1)と本棚(指図書2)を製造する木製品工場において、当月の製造間接費の実際発生額が850円であった。この工場では製造間接費はその実際の発生金額を各製品(指図書)ごとの機械作業時間をもとに配賦している。
当月の機械作業時間の合計は85時間であり、うち指図書1(たんす)の機械作業時間が50時間、指図書2(本棚)の機械作業時間が35時間であった場合、各指図書別の製造間接費の配賦額を算定し、下記の原価計算表を完成させなさい。

(解答)
実際配賦率:製造間接費発生額850円÷機械作業時間合計85時間=10円/時

たんす(指図書1)の製造間接費配賦額:配賦率10円/時×たんすの機械作業時間50時間=500円

本棚(指図書2)の製造間接費配賦額:配賦率10円/時×本棚の機械作業時間35時間=350円

個別原価計算における指図書別原価計算表においては、各製品への製造間接費の配賦額を、各製品(指図書)の列の製造間接費の欄に記入します。原価計算表の縦計は指図書ごとの製造原価の合計、横計は各費目別の発生額の合計を表します。

(関連項目)
直接費の賦課と原価計算表記入(個別原価計算)の基礎
製品が完成した時の処理(個別原価計算)

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