先入先出法の基礎(総合原価計算)

総合原価計算において、月初仕掛品および月末仕掛品がある場合、完成品原価と月末仕掛品原価を算定するための計算方法には先入先出法と平均法とがあります。

このうち先入先出法とは、製造を開始したものから順次完成していくものと仮定して完成品原価と月末仕掛品原価とを算定していく方法をいいます。この方法では、月初仕掛品から順次完成していくと仮定されますので、月末仕掛品の原価は、当月製造費用(当月に新たに投入したものの金額)から算定することになります。

したがって、先入先出法ではまず当月製造費用から月末仕掛品原価を算定し、これを当月の総製造費用(=月初仕掛品原価+当月製造費用)から差し引くことによって差額で完成品原価を算定することになります。

先入先出法による計算手順

1.まず、月末仕掛品原価を当月製造費用(当月投入高)から算定する

2.完成品原価については月末仕掛品原価を当月の総製造費用(=月初仕掛品原価+当月製造費用)から控除することにより差額で算定する。

完成品原価=月初仕掛品原価+当月製造費用-月末仕掛品原価

なお、実際の計算では直接材料費と加工費とを別々に計算し、それぞれの金額を合計することにより月末仕掛品及び完成品原価を算定することになります(直接材料費と加工費の基本的な考え方については完成品換算量の算定(総合原価計算)も合わせてご参照ください)。

(具体例-先入先出法の基礎)

以下の資料より、月末仕掛品原価及び完成品原価を算定しなさい。なお月末仕掛品原価及び完成品原価の算定は先入先出法によるものとする。

(生産数量データ)
月初仕掛品 300個(40%)
当月投入高 700個
合計  1,000個

月末仕掛品 200個(25%)
完成品数量 800個
合計  1000個

※ カッコ内の数値は進捗度を表します
※ 直接材料費については、すべて工程の始点で投入しているものとする。

(製造原価データ)

直接材料費 加工費 合計
月初仕掛品 4,500円 3,250円 7,750円
当月投入高 14,000円 14,600円 28,600円
合計 18,500円 17,850円 36,350円
1.直接材料費の計算

上記の通り、先入先出法とは、製造を開始したものから順次完成していくものと仮定して完成品原価と月末仕掛品原価とを算定していく方法をいいます。この方法では、月初仕掛品から順次完成していくと仮定されますので、月末仕掛品の原価は、当月製造費用(当月投入高)から算定し、完成品原価は差額で算定することになります。

まず直接材料費の計算についてですが、直接材料費についてはすべて工程の始点で投入していますので、実際の製造量をもとに当月投入高から月末仕掛品原価を算定することになります。

(計算過程)
直接材料費の当月投入分の単価:直接材料費の当月投入高14,000円÷当月投入製造量700個=@20円
月末仕掛品原価(直接材料費):当月投入分単価@20円×月末仕掛品数量200個=4,000円
完成品原価(直接材料費):月初仕掛品(直接材料費)4,500円+直接材料費の当月投入高14,000円-月末仕掛品原価(直接材料費)4,000円=14,500円

2.加工費の計算

次に加工費の計算についてですが、加工費(労務費や経費など)については製造工程を通して順次で投入されるものと仮定されますので、実際の製造量にそれぞれの加工進捗度を乗じた加工換算量をもとに当月投入高から月末仕掛品原価を算定することになります。
なお当月投入高の加工換算量は差額(完成品数量+月末仕掛品換算量-月初仕掛品換算量)で算定することになります。

(計算過程)
月初仕掛品の加工換算量:月初仕掛品数量300個×加工進捗度40%=120個
月末仕掛品の加工換算量:月末仕掛品数量200個×加工進捗度25%=50個
当月投入分の加工換算量:完成品数量800個+月末仕掛品加工換算量50個-月初仕掛品加工換算量120個=730個
加工費の当月投入分の単価:加工費費の当月投入高14,600円÷当月投入分加工換算量730個=@20円
月末仕掛品原価(加工費):当月投入分単価@20円×月末仕掛品加工換算量50個=1,000円
完成品原価(加工費):月初仕掛品(加工費)3,250円+直接材料費の当月投入高14,600円-月末仕掛品原価(直接材料費)1,000円=16,850円

3.月末仕掛品と完成品原価の計算

月末仕掛品原価と完成品原価は、上記で求めたそれぞれの直接材料費と加工費とを合計したものですので、以下の算式によって算定します。

(月末仕掛品原価)
月末仕掛品の直接材料費4,000円+月末仕掛品の加工費1,000円=5,000円

(完成品原価)
完成品の直接材料品14,500円+完成品の加工費16,850円=31,350円

となります。

(関連項目)
平均法の基礎(総合原価計算)

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