基準操業度の設定(4つの操業度水準の基礎)

一年又は一会計期間において予期される配賦基準の合計値を基準操業度といいます。
製造間接費を予定配賦する際の予定配賦率は製造間接費の予算額を基準操業度で除することにより算定します。

予定配賦率=製造間接費予算額÷基準操業度

では基準操業度はどのように設定するものなのでしょうか?
基準操業度は以下のようなものの中から会社や工場などの状況を考慮し、最も適切と思われるものを選択します。

理論的生産能力 理論上は達成可能な最大の操業度をいいます。

理論的生産能力は、機械の故障やメンテナンスによる休止分や工員の欠勤などは一切考慮せず、まさに理想的な状態が継続的に持続されるものと想定して設定されることになりますが、実際には機械の故障や工員の欠勤などは必ず発生しますので、理論的には可能であっても実際には達成不可能と考えられます。
したがって理論的生産能力は基準操業度としては採用されない操業度の水準といえます(ただし下記の実際的生産能力などを算定する際の基礎となりますのでまったく意味のないものではありません)。

実際的生産能力 実際に達成可能な最大の操業度水準をいいます。

理論的生産能力は、実際の操業現場では不可避的に発生する機械の故障・メンテナンスや工員の欠勤などを全く考慮せず、机上の計算でのみで導かれる操業度水準であり現実的には達成不可能な操業水準といえますが、この理論的生産能力をもとに通常発生するであろう機械の故障や工員の欠勤などに係る生産停止分を差引して算定され、実際に達成可能と考えられる最大の操業度水準を実際的生産能力といいます。

実際的生産能力は理論的生産能力から不可避的な休止時間を控除して求められた実現可能な最大の操業度水準ですが、可能な限り工場をフル稼働するという前提は理論的生産能力とさして変わるものではありません。したがって製品需要が十分にあり、生産調整などは一切に考慮せず工場のフル稼働を前提としているような状況でなければ基準操業度として採用するのは適切ではありません。

平均操業度 工場の操業に影響のある季節的な影響や予想される景気変動等による影響を長期的に平均化して算定される操業度をいいます。

長期的に平均化する期間は通常は3年または5年程度となります。平均操業度は季節的な影響や景気変動などによる操業度水準への影響などを予測することが難しくない業種などでは合理的な操業度水準を提供することになります。

期待実際操業度 次の1年間に予想される(期待される)操業度水準をいいます

平均操業度より短期的な視点で予測するため、長期的な操業度の予測が困難な場合などにおいて用いられます。

上記の操業度水準のうち、理論的生産能力は基準操業度として採用されるケースはなく、実際的生産能力・平均操業度・期待実際操業度のうちから企業の状況などを考慮して適切と思われるものが基準操業度として採用されることになります。

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