固定費調整とは、直接原価計算において算定された営業利益を全部原価計算の営業利益に修正することを言います。 |
1.固定費調整の必要性と基本等式
原価管理や予算計画など、直接原価計算によってもたらされる原価情報は企業内部の経営者や管理者などにとって大変有用なものとなりますが、現在の制度会計(外部報告会計)においては全部原価計算以外は認められておりません。
したがって企業内部での利用を重視して直接原価計算を行っている場合であっても、企業外部の利害関係者への情報提供(決算書の作成)のためには全部原価計算の情報へと修正する必要があります。
そのため、固定費調整により直接原価計算の利益情報から全部原価計算の利益情報へと修正のために行う必要があります。
直接原価計算の営業利益から全部原価計算の営業利益は以下の算式によって導かれます(全部原価計算の営業利益と直接原価計算の営業利益との差額の等式の詳細については直接原価計算と全部原価計算の営業利益の差額についてをご参照ください)
直接原価計算の営業利益+期末在庫に含まれる固定費-期首在庫に含まれる固定費=全部原価計算の営業利益 |
2.期末在庫に含まれる固定費の算定方法
上記等式における期末在庫(期末仕掛品・期末製品)に含まれる固定費の算定については、期末在庫に含まれる固定費をより厳密な方法(変動製造原価の計算と同様の方法)で算定するころがし計算法と、厳密な計算を省略し、より簡便な方法で算定する一括調整法とがあります。
ころがし計算法 | 固定製造原価についても、変動製造原価と同様の方法により期末仕掛品・期末製品に含まれる原価を算定します。
すなわち、当期に発生した固定製造原価を完成品原価と期末仕掛品原価とに集計し、さらに当期完成品原価に集計された固定製造原価を売上原価と期末製品原価とに按分します |
一括計算法 | 当期に発生した固定製造原価を、何らかの配賦基準(直接作業時間や機械作業時間など)に応じて一括して期末仕掛品原価・期末製品原価・売上原価とに按分する方法です。 |
上記の方法のうち、ころがし計算法は固定製造原価についても変動費と同じ方法により製品原価計算をやり直すことになりますので、最初から全部原価計算を採用していた場合と計算結果は一致します(より正確な計算方法であり、原則的な方法となります)。
それに対して一括計算法は、簡便的に配賦計算を行っているだけですので、全部原価計算の計算結果とは一致しません。